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愛情はいつまで美しく保てるか。

2022年6月23日

最近懐かしい本を読みました。

 

 

 

 

杏朱です。

 

 

 

 

新井素子さんの、『ひとめあなたに』

 

 

 

忘れもしない中学二年生。

 

 

 

 

14歳。

 

 

 

 

私が人生で一番多くの本を読んできた時期です。

 

 

 

 

この作品は初版1985年とかなり古いです。

 

 

 

 

母から勧められて読み始めました。

 

 

 

 

 

『ひとめあなたに』

 

 

 

 

 

 

純愛ラブストーリーか切ない恋のお話かと14歳の私は特に構えずフラッと読み始めました。

 

 

 

 

 

大好きだった彼が段々そっけなくなり、無気力に感じるようになりました。

 

 

 

 

 

次第に大学の授業にも顔を出さなくなりました。

 

 

 

 

 

単位が取れず卒業が怪しくなりました。

 

 

 

 

 

主人公の圭子は流石に彼が心配になり家まで押し掛けます。

 

 

 

 

 

無理やり引っ張り出し連れてきた喫茶店で彼は圭子に別れたいと告げます。

 

 

 

 

 

 

彼は癌でした。

 

 

 

 

 

 

 

余命は幾ばくもなくおそらく転移しているだろうと。

 

 

 

 

 

手術を行うことに決めた彼ですが、癌とともに右腕も失うということでした。

 

 

 

 

 

彼も圭子も美大に通っています。

 

 

 

 

 

彼は彫刻科の生徒だったのです。

 

 

 

 

 

芸術が大好きな彼。

 

 

 

 

 

彼の作品が、彼自身が大好きな圭子。

 

 

 

 

 

なぜ別れないといけないのか、

 

 

 

 

 

なぜ彼が、よりによって大好きな彼がなぜこんなことにならないといけないのかと現実を受け止めきれませんでした。

 

 

 

 

 

翌朝自宅で目を覚ました圭子はその日からちょうど一週間後に地球が小惑星と衝突し滅亡すると耳にします。

 

 

 

 

 

 

最後の一週間を一緒に過ごそうと彼女の思いを打ち明けた男友達の制止を振り切って圭子はふられたばかりの恋人に会いに行くことを決めます。

 

 

 

 

 

圭子の自宅、江古田。

 

 

 

恋人の自宅、鎌倉。

 

 

 

 

 

当然交通機関も麻痺し徒歩しか選択肢はありません。

 

 

 

 

 

地球最後の一週間。

 

 

 

 

 

昨日フラれたばかりの大好きな彼。

 

 

 

 

 

1日でも長生きして欲しかった彼にひとめ会いたいという思いから、

最初で最後の旅が始まります。

 

 

 

 

 

そんな圭子の旅の道中で同じく運命に翻弄される女性たちが描かれます。

 

 

 

 

 

 

チャイニーズスープという章に登場するエピソードはかなりグロテスクなので要注意です。

 

 

 

 

作品冒頭の圭子が彼との思い出を回想するシーンに、

 

 

 

『朗(彼)が海の話をすると、あたしには、海の音が聞こえた。

潮の香りまで、鼻の奥をくすぐった。

あたしが山の話をした時、朗はおそらく、その稜線を見てくれたと思う。

岩肌の質感を納得してくれたろう。』

 

 

という表現があります。

 

 

14歳の私にはこれがいまいちピンときませんでした。

 

 

 

 

22歳になった今、ちょうど圭子と同じ歳になって見ると

 

 

 

このように書かれている関係がどれほど幸せで満たされたものかよくわかる気がします。

 

 

 

だからこそ、自分の理解できない領域で苦しみ共感や同情を一切拒絶する彼の前に

 

 

 

もう一度現れひとめ会いたいと思う圭子の気持ちを考えるととても切ない気持ちでいっぱいになりました。

 

 

 

 

恋人や親子、夫婦、または自分自身への愛のあり方について

 

 

 

様々な角度から描かれ、地球が終わることがその愛に狂気の影を落とすとても興味深い作品です。

 

 

 

地球最後の一週間が突然訪れたとしたら、

 

 

 

はたして穏やかに過ごすことができるのか

 

 

 

 

今抱いている大切な人への愛情はいつまで美しい形を留めておくことができるのか

 

 

3日は頭を悩ませました。

 

 

 

 

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