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BIUTIFUL

2017年4月24日

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

 

現役監督の中で、一際まぶしい光を放つ本格社会派監督。

 

今回は 「 BIUTIFUL 」 について。

 

教養のない父が、娘に「美しい」のスペルを聞かれて答えた

 

間違えたビューティフル。

 

 

死者の声が聞こえる特殊な能力のある男が、余命二ヶ月を宣告される話し。

病弱で情緒不安定な別居中の妻、幼い2人の子供達。

貧しいアパートに、貧しい食事。

愛がバラバラになってしまった家庭。

 

絶望に近い環境の中、父親は家族のために残りの人生で出来る全てを捧げる。

 

しかしストーリーは、無情にも何も良い事がなく2時間が過ぎていきます。

 

特に説明はないのだけれど、この主人公の父親は

きっとろくな人生は送っていない。

なぜなら、注射が下手なナースから注射器を取り上げ、自ら採血するシーンがあったり(ドラッグ常用者?)

コピーブランドを中国人に作らせ、黒人に販売させてみたり

中国人を作業現場で不法労働させてピンハネしたり

ビューティフルのスペルも正しく書く事が出来ないシーンがある。

 

だけどなぜか、理解したくなるというか

所謂「悪いやつ」とは思えない

不思議な雰囲気がある。

 

 

そして残された二ヶ月は、BIUTIFULというスペルのように

間違いだらけに進んでいく。

間違えたビューティフルは

果たして美しさを半減させてしまうのだろうか。

 

誰かに何かを残そうとした時、

人はビューティフルでいられるのだろうか。

 

無情にも残された時間は少なくなり、体力は衰えていく。

 

 

重い重い140分か続く映画で、綺麗な情景なんてほとんど出てこないこの映画。

 

 

一体、どんなメッセージが詰まっているのだろう。

 

 

「フクロウは死ぬ間際、毛玉を吐き出すのを知っているか?」

 

そう問いかけられるシーンがある。

 

人が死んだり、生きたり、殴られたり、抱きしめたり。

 

宗教観無しに、理解する事が不可能とも思える映画。

 

 

あまりにも深すぎるテーマに、若干理解不能な要素がありますが

 

BIUTIFULが、間違ったスペルだと

切り捨てるような、そんな感覚だけは嫌だなと思った。

 

僕たちは、誰かの一言

誰かのあの行動を

決めつけて、切り捨てて、感性を無駄にしていないだろうか。

 

 

日常で、生死を意識して生活する事は

とても辛いし、難しい事だけど

BIUTIFULに隠された、その優しい感情を

敏感に感じ取れる人間になりたいものです。

 

 

幸福とか、不幸っていうのは

一つの理由で判断する事は出来ないし

もはや、そんな事はナンセンスなんだということを

この映画は教えてくれる。

 

やっぱりイニャリトゥの作品は素晴らしい。

 

大切な事はいつも映画が教えてくれる。

 

良い映画を皆様の生活に。

 

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